O Stole, Który Uciekał do Lasu(森に逃げた机)

picture book

 

この絵本をつくった芸術家夫妻について語るのには、まだ私は早い。でも、この絵本を久しぶりに本棚から取り出してみて、うーむとうなってしまった。

手元にあるのは、2013年に再販されたもので、上記の画像は1963年の初版のもの。(残念ながら、再販された本の表紙には目障りな「映像とオーディオブックのCD付き」というピカピカし丸いCDを模したシールがはってあり、はがせない。)うなったのは、シールがはがせないからだけではなく、何ともいえぬ、机のモノクロ写真のコラージュと、文字の配置に。ページ上の中央に書かれているStefan Themerson (ステファン・テメルソン 1910-1988)が文を担当。机の脚の間にふわりと名前が見えるFranciszka Themerson(フランチシュカ・テメルソン1907-1988)が妻であり、絵を担当。右の題字 O Stole, Który Uciekał do Lasu(森に逃げた机)は、今にもどこかへふらりと行ってしまいそうな予感で満ちている。

表紙をめくると、まず、「あるとき、私が詩を書いている机が 靴を2組履いて、下の階へ向かって走って行った」と韻を踏んだ文章が始まる。
そして、その次の見開きで、

「5階から1階へ」
「(それは私の靴と 
 私の妻、フランチシュカの靴だった
 月は2月で
 2月は寒く滑りやすい)」
と続く。
机が靴を履くなんて!テメルソン夫妻は映像、写真、文学、絵画、出版と多領域で活動した芸術家ともいわれ、前衛芸術家とみなされているようだ。http://www.l.u-tokyo.ac.jp/genbun/131213sady.html

そしてその後はどうなったかというと、夫妻ははだしで机を追いかけたのだが、机は足がはやく、街を抜け、野原を抜け、そして森へと。そこで、机ははた、と止まる。

「春のぽかぽかとした太陽が照り
 海を越えて冷たい空気はは逃げて行った

 私の机はしばし立ち止まり
 地面に足を生やした。」
 そして、次のページで、机のインクの染みから葉が生えて、枝が伸び、もう机はどこへも行かなかった、と終わるのであった。
再販された絵本の最後の解説文によると、このお話は夫妻によって、1940年にパリで発行されたポーランドの新聞の子ども用のページに掲載されたのが最初だったそうだ。第二次世界大戦中、あらゆる価値あるものが破壊されるなかで、自然や動物だけが変わることなく、そのような自然への回帰が、テメルソン夫妻のこの頃の作品にテーマとして繰り返しあらわれるという。
ポーランドに生まれ、パリ、そしてロンドンへ移住して活躍した2人については、またいつか書きたい。

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